脳神経外科治療の可能性がある主な症状

A.脳血管障害   くも膜下出血(脳動脈瘤)、脳梗塞、脳内出血、他

B.頭部外傷       慢性硬膜下血腫、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、他

C.その他          脳腫瘍、水頭症、その他

脳血管障害について

脳血管障害は「脳卒中」とも呼ばれ、脳の血管の異常が原因で起こる病気のことです。これらは大別すると、脳の血管がつまることで脳細胞が壊死をする「脳梗塞(のうこうそく)」と、脳の血管や動脈瘤などが破れて出血する「脳内出血」や「くも膜下出血」に分けられます。

くも膜下出血

脳の表面はくも膜という膜で被われており、くも膜の下(つまり脳の表面や脳の隙間)に出血するため、くも膜下出血と呼ばれます。脳の動脈の一部分が瘤状にふくらんだ動脈瘤が破裂することにより起こります。くも膜下出血がひとたびおこると、1割程度の人は即死するといわれ、残りの方は出血が一旦は止まった状態で病院に搬送されます。出血の量が多く脳の障害が強ければ意識障害が強く、治療がうまくいっても後遺症や死亡ということが多くなります。反対に出血の量が少なく脳の障害が少なければ意識がよく、後遺症なしに治るチャンスが増えます。
くも膜下出血は後遺症なく社会復帰できる方が全体の1/4程度という怖い病気です。その治療は複雑な病態に対応することが必要で、以下の関門を克服しなくてはなりません。

1.再破裂

動脈瘤は一旦破裂すると再破裂がおこりやすくなり、症状が急に悪化したり死亡したりすることがあります。このため、まずは再破裂を防止するべく手術が必須となります。手術は二通りあって、開頭して行うクリッピング手術とカテーテルによるコイル塞栓術が挙げられますが、動脈瘤の場所や患者さんの状態により最も適した方法を検討して提供いたします。

2.脳血管攣縮

くも膜下出血後、二週間以内に発生することが多い病態で、出血した血液が脳の血管を刺激して血管が収縮させることで起こります。脳への血流が少なくなって脳梗塞を起こす危険があるため、点滴やカテーテル治療による血管拡張等で対応します。

3.水頭症

くも膜下出血の直後から3ヶ月後以内にかけて多く発生します。くも膜下出血のために脳脊髄液の循環が障害され、水が溜まって脳室が拡大することで起こります。水頭症になると脳を圧迫し、意識障害、認知機能低下、歩行障害、尿失禁などの症状が出現します。治療は、脳室に管を入れ皮膚の下を通し腹部に脳脊髄液を流す手術を行います。(脳室腹腔短絡術:シャント手術といいます。)

未破裂脳動脈瘤に対する治療について

脳動脈瘤とは脳の動脈にできた瘤(コブ)のことで、この瘤があっても一度も破れたことの無い場合には、これを未破裂脳動脈瘤と呼びます。未破裂脳動脈瘤は一般の成人の約4~6%位がこれを有すると言われており、脳ドックの普及、CTやMRIなどの普及により、発見される頻度が増加してきています。
脳動脈瘤は、ひとたび破裂すれば「くも膜下出血」を引き起こし、一旦発症すると約1/3しか社会復帰ができず、その他は重篤な障害を残したり、亡くなってしまうことがあります。動脈瘤の破裂率に関しては、瘤の大きさや形、生活習慣や全身の状態などによって様々なために個々に評価する必要がありますが、破裂率が高いと考えられる場合や患者さんがご希望される場合などには、くも膜下出血の回避を目的として脳動脈瘤に対し治療が行われます。

脳動脈瘤の治療選択について

当院では、開頭によるクリッピング手術と、カテーテルによる治療(脳血管内手術)の両方に常時対応しておりますので、患者さんのご希望を伺ったうえで最善の治療方針を選択することが可能です。

1.開頭クリッピング手術

開頭手術を行って動脈瘤の頸部をチタンなど生体親和性の良い金属で作られた小さなクリップで閉塞させます。

2.脳血管内手術(カテーテル手術:脳動脈瘤コイル塞栓術)

極小のプラチナコイルがマイクロカテーテルを経由して脳動脈瘤に導かれます。コイルは柔軟性に富むため、脳動脈瘤の形状に沿って留置されます。 脳動脈瘤はコイルで充填されて、脳動脈瘤内部への血流を防ぎます。

http://brainaneurysm.jp/index.htmlより引用

実際のカテーテル治療画像

脳梗塞

脳の血管が何らかの原因で狭くなったり、詰まったりするとその先にある脳細胞に血液が充分に行き渡らなくなります。血液が足りなくなると脳細胞は死んでしまい、これを脳梗塞と言います。脳細胞は場所により異なった働きをしているため、脳梗塞を起こした部位・範囲によって様々な症状を起こします。
脳梗塞の治療に関しては、従来は脳梗塞の拡大・悪化を抑える点滴・内服とリハビリテーションによる機能回復が一般的でしたが、最近では発症後早期なら使用可能なt-PA療法(血栓を強力に溶かす点滴)や、カテーテルによる血栓回収・再開通療法が大きな効果を発揮するようになってきており、当院では24時間対応しております。 また、内頚動脈狭窄症など脳梗塞の原因となりうる病変に対して行われる頸動脈ステント留置術(CAS)や、血管の慢性閉塞によって血流が足りなくなった部分に血流を補うバイパス手術などの治療も積極的に行っております。

脳内出血

脳内には無数の血管が細かく張り巡らされていますが、その中でも細い血管が切れてしまい、脳実質の中に出血する病気です。脳内出血は場所・大きさにより状況が異なり、無症状から死に至るような重症のものまで様々です。小さくて生命の危機に直結しない出血の場合は点滴・安静にて出血拡大を防ぐ治療が選択されます。しかし、出血が大きくて重症の場合や、急速に大きくなる(=まだ止血していない)出血の場合、また手術をすることで症状回復が明らかに早くなると判断される場合は、血腫を取り除く手術が必要になります。
脳内出血の原因の多くは、動脈硬化によって脳動脈が傷んだ状況に高血圧状態が加わることで起こります(=高血圧性脳内出血といいます。)が、それ以外にも脳動脈の血管奇形や血管腫等が原因となる場合もありますので、追加で詳しい精査が必要なこともあります。